〜9年間の製造現場で見たリアルな課題と希望〜
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🧂 日本は「食の安全大国」だが…その裏にある現実
日本では、アレルギーや食中毒に極めて敏感です。
そのため、企業はほんの少しのリスクでも製品を廃棄し、ブランドを守ることを優先します。
その結果として生まれているのが、大量の食品ロス。
現場の実態:9年間の製造業経験から見えたロスの構造
食品ロスは「家庭のキッチン」だけの問題ではありません。
工場・飲食店・流通など、事業者レベルでのロスが圧倒的に多いのです。
❌ 製造現場でのロスの実例
- 検品段階:異物混入や欠損で原料廃棄
- 加工段階:形状ミス・規格外で不良品に
- 包装段階:「グラム数超過」や「変形」で販売不可
➡ 食べられるのに捨てられる現実。歩留まり50%以下も珍しくありません。
訳あり品にできない理由とは?
「訳あり品として売れないのか?」と上司に聞いた時の答え:
- 正規品の価値が下がる
- 包装・再検品のコストが高すぎる
つまり、廃棄の方が安上がり。
これは倫理ではなく、企業の経済合理性による選択です。
📊 データで見る食品ロスの深刻さ
- 日本の年間食品ロス:約522万トン(農林水産省)
- 毎日お茶碗1杯分(約113g)が1人あたり廃棄されている計算
- その約半分(約247万トン)は事業系ロス
➡ 製造・流通などの事業者ロスを減らすことが、最も効果的な対策。
食料自給率38%の国が、なぜロスできるのか?
- 自給できているのは米・一部野菜程度
- 小麦・大豆・とうもろこし・飼料などはほぼ輸入依存
- 飼料自給率は25%(2022年)
➡ 日本は、輸入が止まれば食べていけない国。
🌍 食品ロス削減の世界的取り組み
- 🇫🇷 フランス:スーパーの廃棄禁止法、寄付の義務化
- 🇩🇰 デンマーク:訳あり品専門スーパー「WeFood」
- 🇺🇸 アメリカ:フードリカバリー運動による再配分
🇯🇵 日本の科学的・企業的アプローチ
✅ 科学的対策
- 「年月日」→「年月」表示で賞味期限の柔軟化
- AIによる需要予測で過剰在庫を回避
✅ 実際に取り組んでいる企業
- セブン-イレブン:値引き販売・フードバンク連携
- 味の素:原料ロスを肥料・飼料に再利用
- イオン:見切り品コーナーの常設
- ロスゼロ、Kuradashi:賞味期限間近品をオンライン販売
💡 改善に向けた具体策
- 法律面:「食品ロス削減推進法」(2019年)で事業者に義務化
- ビジネス面:「訳ありEC市場」の拡大(Kuradashi等)
- 技術面:AI・IoTで在庫管理・製造の最適化
- 連携面:企業間での「規格外食材」の業務用活用
🍜 「売り切れ御免」スタイルの合理性
ラーメン屋などで見かける「売り切れたら終了」方式は、
仕込み量を限定し、廃棄をゼロにする理想的な仕組み。
➡ 食品ロスを抑えつつ、経営の効率化も実現。
✅ 私たちにできること
- 訳あり商品・期限間近品を積極的に選ぶ
- 「賞味期限≠安全期限」と正しく理解する
- フードロス対策企業の商品を応援購入する
- 「もったいない販売」をSNSで拡散・支援する
私の想い:利益と倫理のバランス
企業が「捨てる方が得」と感じる今の仕組みは、
地球や未来の子どもたちにとっては持続不可能です。
- 「訳あり=価値ある選択肢」になる社会へ
- 「食品ロス削減=企業価値の向上」となる風潮を
🌱 まとめ:一人ひとりの行動が未来を変える
食べられるのに捨てている。
それは、私たち自身の“もったいない心”が忘れられている証です。
食品ロスの削減は、環境問題・貧困問題・国の食料安保と直結しています。
家庭から、会社から、そして一人の選択から始めましょう。
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