はじめに:原因は「他人」ではなく「自分」にある?
「また愚痴を言ってしまった……」「気づけば他人のせいにしていた」。
そんな経験、誰しもあるのではないでしょうか。
私もそうでした。何かうまくいかないたびに、他人や環境を責め、自分ではどうしようもないものに怒りや悲しみを向けていました。そんなとき出会ったのが「原因自分論」という考え方です。
原因自分論 vs 原因他人論:考え方の違い
◆ 原因他人論とは
他人や外的環境に原因を求める思考です。
例:「あの上司が厳しすぎる」「夫の協力がないから大変」
◆ 原因自分論とは
すべての原因を「自分の選択や行動」に求める思考です。
例:「その上司のいる職場を選んだのは自分」「夫にうまく協力を頼めていないかも」
この考え方は、「すべては自分の責任だ」と自分を責めることではなく、「自分が変わることで現状を変えられる」と前向きにとらえる思考法です。
科学的根拠:なぜ「原因自分論」が有効なのか?
1. ローカス・オブ・コントロール(統制の所在)理論
心理学者ジュリアン・ロッターが提唱した概念で、自分の人生を「自分でコントロールできる」と信じる人は、幸福度や成功率が高い傾向があります(Rotter, 1966)。
- 内部統制型(Internal locus of control):自分の努力や行動で結果を変えられると考える
- 外部統制型(External locus of control):運や他人によって人生が左右されると考える
原因自分論はまさに「内部統制型」に近い思考です。
2. 認知行動療法(CBT)との関連
CBTでは、物事の捉え方(認知)を変えることで行動と感情を変えていくことを目指します。「自分の思考や選択が状況に影響している」と捉える原因自分論は、CBTのアプローチと親和性が高いです。
- 参考:Beck, A. T. (1976). Cognitive Therapy and the Emotional Disorders
原因自分論のメリット
- 自己成長が促進される
→ 自分の行動を変える意識が芽生える - 感情のコントロールがしやすくなる
→ イライラや不満を他人にぶつけなくなる - 人間関係のストレスが減る
→ 期待せず、コントロール可能な範囲に集中できる
実体験:原因自分論で変わった私の考え
私は結婚後、大きな生活の変化に直面しました。
- 通勤1時間以上の負担
- 妻の仕事退職と収入不安
- 結婚式費用の問題
この状況の中で、私は何度も「だから言ったのに」と妻を責めてしまいました。けれど、それは本当は自分の責任でした。
- 妻が退職する選択肢を提案したのは自分
- 「続けたほうがいい」と言いながら、強く背中を押すこともできなかった
- 苦しい中で支えてくれた妻に、感謝よりも怒りを向けていた
そんな自分に気づけたのは、「原因自分論」の考え方を知ったからです。
今でもつい「原因他人論」に引っ張られそうになりますが、そのたびに「原因は自分にある」と内省することで、夫婦関係も落ち着き、以前よりトラブルは明らかに減りました。
注意点:自己責任と自己否定は違う!
原因自分論を採用する際に注意すべきなのは、「すべて自分が悪い」と思い込まないこと。
これは「自分を責める理論」ではなく、「自分の力で未来を変えられる」というポジティブな信念に基づく思考法です。
実践のコツ:原因自分論を身につける方法
- 起きた出来事をノートに書き出す
→「どんな選択をしたのか?」「他に選べる行動はなかったか?」と振り返る - イライラしたときに「私は何を期待していた?」と自問する
→ 期待の裏には、自分のコントロール外にいる他人への依存がある - 「自分は変えられるが、他人は変えられない」と繰り返し唱える
- カウンセリングやコーチングを活用する
→ 客観的な視点から自分を見つめ直す手助けになる
まとめ:原因自分論で「未来の自分」を変える
人生は、自分の選択の積み重ねです。他人や環境は変えられませんが、「自分」ならいつからでも変えられます。
「どうせ変わらない」と愚痴を言うのではなく、「自分には変える力がある」と信じること。
それが、原因自分論です。
参考文献・出典
- Rotter, J. B. (1966). Generalized expectancies for internal versus external control of reinforcement. Psychological Monographs.
- Beck, A. T. (1976). Cognitive Therapy and the Emotional Disorders. International Universities Press.
- 石川 善樹(2016)『なぜ僕たちは、働くのか』ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 鈴木祐(2019)『ヤバい集中力』SBクリエイティブ(認知行動療法を含む自己認知変革の解説)
最後に
この記事が、過去の私と同じように「他人のせいにしたくなる」気持ちを持っている人の支えになれば幸いです。
自分を責めるのではなく、自分を変えることで人生は必ず前向きになります。