必要最低限の保険

あなたの家庭は本当に死亡保険が必要?

2025年版・遺族年金と必要保障額の「正しい考え方」

「もし夫が亡くなったら、生活はどうなるんだろう?」
不安が大きいほど、つい保険を厚めに入りたくなりますよね。

一方で、日本には遺族年金という公的な“死亡保険”があり、これを正しく理解できれば、

  • 学資保険はほとんどの家庭で不要
  • 生命保険は「子どもが成人するまでの不足分だけ」で十分なことも多い
  • 独身・子なし夫婦は、そもそも死亡保険の必要性がかなり低い

といった事実も見えてきます。

ただし、

「遺族年金があるから、ほとんどの家庭で保険は不要!」
という言い切りは危険です。

本記事では、2025年時点の最新情報と、今後予定されている遺族厚生年金の有期化(原則5年)の動きも押さえつつ、
「どう考えればいいか」の地図を整理していきます。


この記事のスタンス

  • 方向性として
    • 「独身・子なしは死亡保険の必要性が低い」
    • 「子あり一馬力ほど必要保障が大きくなりやすい」
    • 「学資保険は利回り面で不利なことが多い」
      という大枠の考え方は、FPの一般的な見解と近いです。
  • ただし
    • 遺族年金の金額は毎年改定される
    • 遺族厚生年金は2028年頃から有期給付(原則5年)化が予定されている
    • 妻の就労状況・健康状態・地域の物価・家賃・貯蓄額などによって「不足額」は大きく変わる

→ この記事はあくまで考え方のヒントとして使い、

「うちの家庭は保険ゼロでOKだ!」
この記事1本だけを根拠に判断するのは避けてください。


1.2025年時点の遺族年金の仕組みと金額の目安

まず、公的な遺族年金は大きく2種類あります。

  1. 遺族基礎年金(国民年金の部分)
  2. 遺族厚生年金(厚生年金の部分)

遺族基礎年金(子どものいる配偶者の場合)

2025年度の遺族基礎年金(子のある配偶者)の年金額は、ざっくりいうと

83万1,700円 + 子どもの加算 23万9,300円(1人目)

子どもが1人なら、

83万1,700円+23万9,300円 = 約107万1,000円/年

子どもが18歳になる年度末まで(障害があれば20歳未満まで)受け取る仕組みです。


遺族厚生年金(会社員として厚生年金に入っていた人)

遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3が基本です。

  • 平均標準報酬月額が30万円程度
  • 一定期間(ざっくり25年以上)厚生年金に加入していた

といったモデルだと、年30〜40万円台になるケースが多いというFP向けの解説があります。

ここでの金額は「代表的な目安」であり、実際は加入期間や報酬額で変わります。


2028年以降の「有期化」予定にも注意

すでに国の審議会で議論され、厚労省の資料にも出ている通り、

  • 遺族厚生年金の一部について
  • 原則5年間の有期給付に見直す法案が出ています。

概要としては、

  • 施行は2028年4月(令和10年)頃が予定
  • すでに受給している人や、子どもがいる遺族など、影響を受けない層も多い
  • しかし「子のない40歳未満の妻」など、一部は5年で打ち切りになる方向

という内容です。

今後の改正で「いつまで、いくらもらえるか」が変わる可能性がある
“今の金額をそのまま18年分かけ算”するのはリスクがある、というのが大事なポイントです。


2.モデルケースで「ざっくり」不足額を考えてみる

ここからは、あくまで一つのイメージとしてのモデルケースです。

【モデル】

  • 夫:30代・会社員・年収500万円
  • 妻:パート → 夫死亡後に正社員化(年収300万円想定)
  • 子ども:0歳が1人
  • 住居:賃貸
  • 貯蓄:ここでは考慮せず(0円スタート仮定)

① 遺族年金はいくらくらいになりそうか?

※計算を分かりやすくするため、2025年度水準が今後も続くという、かなり単純化した前提です。

  • 遺族基礎年金:
    年額 約107万1,000円 × 18年
    約1,928万円
  • 遺族厚生年金:
    年額 約37万円 × 18年(報酬月額30万円程度のモデル)
    約666万円

合計すると、

約1,928万円 + 約666万円 = 約2,600万円

というイメージです。

※実際には、

  • 金額は毎年物価などで改定
  • 将来の法改正で受給期間が変わる可能性
    があるため、あくまで“今の制度・水準でざっくり計算した参考値”です。

② 生活費と妻の収入をどう見るか?

【前提】

  • 「母+子1人」で暮らすのに必要な生活費
    → 月25万円(年300万円)と仮定

子どもが0歳から18歳になるまで、ざっくり18年間とすると、

生活費合計:300万円 × 18年 = 5,400万円

妻が夫の死亡をきっかけに正社員として年収300万円を確保できたと仮定すると、

妻の収入:300万円 × 18年 = 5,400万円


③ このモデルだけを見るとどうなるか?

計算だけを単純に行うと、

  • 必要な生活費(18年分):5,400万円
  • 妻の収入(18年分):5,400万円
  • 遺族年金:+約2,600万円

→ 計算上はむしろプラスが出るので、
「理屈だけでいえば死亡保険はなくても生活費は回る」という結果になります。


④ でも、このモデルには“楽観バイアス”がある

この前提には、現実には厳しい点がたくさんあります。

  • 妻が正社員で年収300万円をすぐに・安定して得られるとは限らない
  • 子育て・介護・自分の病気などでフルタイム勤務が難しいかもしれない
  • 家賃や物価は地域で大きく変わる
  • 教育費(大学進学など)を別途どう見るかで必要額は大きく変動
  • 将来の税制・社会保険料・年金制度は確定したものではない

だからこそ、このモデルは

「うまくいった場合の一例」
「考え方のたたき台」

と捉えるのが安全です。


3.モデルを少し変えるだけで、必要保障額は大きく変わる

たとえば、次のような条件に変わると、結論はガラッと変わります。

  • 妻がパートのまま(正社員になれない)
  • 子どもが2人・3人と増える
  • 家賃が高い都市部に住んでいる
  • 共働きだが、夫の収入に依存している
  • 貯蓄がほとんどない・借金が多い

この場合、

「遺族年金+妻の収入」だけでは不足する
死亡保険で不足部分をカバーした方が安全

という判断になりやすいです。


4.家族構成ごとの“方向性”だけ押さえておこう

細かい金額は家庭で全く違いますが、
FP実務での一般的な考え方は、だいたい次のような方向性です。

独身

  • 自分が亡くなっても、生活が行き詰まる家族はいない
  • 葬儀費用・わずかな遺産整理資金があれば足りる

死亡保険の必要性はかなり低い


子なし夫婦

  • どちらかが亡くなっても、残された側は自分で働いて生活できるケースが多い
  • 貯蓄や持ち家があるなら、ますます死亡保険の必要性は下がる

「高額な死亡保障」は不要なことが多い


子あり一馬力(専業主婦+子ども)

  • 夫の収入に家計が強く依存
  • 妻がすぐに正社員化できるとは限らない
  • 遺族年金はあるが、それだけで全てを賄えるとは限らない

死亡保険の必要性が最も大きくなりやすい層


子あり共働き(妻も正社員)

  • 夫が亡くなっても、妻の収入+遺族年金でかなりカバーできることが多い
  • 「貯蓄+教育費+住宅ローン残高」の状況次第では、小さめの保障で済むことも

ゼロとは言い切れないが、“薄くてよい”ケースが多い


5.学資保険はなぜ不利になりやすいのか?

学資保険は、

  • 貯蓄(積立)+わずかな死亡保障
  • 途中解約で元本割れしやすい
  • 今の超低金利環境では利回りが低い

という特徴があります。

一方で、

  • 遺族年金
  • 夫(または妻)の死亡保険(定期/収入保障)

をきちんと整えれば、

大学費用などは
「通常の貯蓄」や「つみたて投資」で準備した方が柔軟で有利

というのが、多くのFPの共通した見解です。


6.マイホームと団信:保障は軽くなるが、「家を買うべき」とは言えない

住宅ローンを組むと、ほとんどの場合「団体信用生命保険(団信)」が付きます。

  • 契約者が死亡・高度障害になると住宅ローン残高がゼロになる
  • 残された家族は、ローンのない家に住み続けられる

という意味では、団信はとても強力な“死亡保障”です。

たとえば賃貸で家賃月8万円の家庭なら、

8万円 × 12ヶ月 × 18年 = 約1,728万円

の住居費が団信のおかげで不要になるイメージです。

→ この分、必要保障額は確かに小さくなります。


ただし、「だから持ち家がおトクです!」とは言えない

ここをはっきりさせておきます。

この話は、あくまで「団信があると必要保障額が下がる」という“保険の話”であり、
住宅購入そのものをおすすめしているわけではありません。

日本の不動産は、

  • リセールバリュー(売却価値)が弱い
  • 地方や郊外の物件は値崩れしやすい
  • 修繕費・固定資産税・火災保険などの追加コスト
  • 転勤・転職・離婚など、人生の変化に対する柔軟性が下がる

といった問題も多く、必ずしも“資産として有利”とは言えません。

団信 = 必要保障を下げる道具
不動産 = 投資ではなく「消費」として慎重に検討

この2つは切り分けて考えるのが安全です。


7.この記事から持ち帰ってほしい「3つのポイント」

最後に、誤解を避けつつ、エッセンスだけを整理します。


① 遺族年金は「かなり大きい」が、将来の改正も視野に

  • 子どものいる配偶者なら、遺族基礎年金だけで年100万円前後
  • 条件次第で遺族厚生年金も上乗せされる
  • 2028年以降、一部で有期化(5年)が予定されているため、
    「今の水準が永遠に続く」前提は危険

② 「独身・子なし」の死亡保険ニーズは低く、「子あり一馬力」は要注意

  • 独身や子なし夫婦は、死亡保険の必要性が小さいことが多い
  • 一方、子ありで一馬力の家庭は、しっかり必要保障額を試算した方が良い

③ 「ほぼ全ケースで保険不要」は言い過ぎ。個別の数字で判断を

  • 妻が正社員で安定収入を得られるモデルでは、
    「不足がほぼ出ない」という試算もあり得る
  • しかしそれは、
    • 地域
    • 仕事内容
    • 健康状態
    • 子どもの人数
    • 住宅ローン
    • 貯蓄額
      などで簡単に崩れる

だからこそ、この記事は
「考え方の地図」として読むことをおすすめします。

具体的な保障額は、

  • 年収
  • 貯蓄
  • 家族構成
  • 住宅ローンの残高
  • 教育方針

などをふまえて
1家庭ごとにシミュレーションするのが現実的です。