「国の借金」と聞いて、
海外からお金を借りていて、その返済を私たちが背負う——
以前の私は、そんなイメージを持っていました。
だからこそ、
「将来は大丈夫なんだろうか」
と、漠然とした不安を感じていたのだと思います。
でも、経済の仕組みを知ることで、
数字だけを見て怖がる必要はなかったと気づきました。
この文章が、
国の借金を冷静に考えるきっかけになれば嬉しいです。
ただし「国の赤字=民間の黒字」は単純すぎる話でもある

「日本の借金は◯◯兆円」
そんなニュースを見ると、将来が不安になりますよね。
一方で最近は、
「国の赤字は民間の黒字だ」
という説明もよく見かけるようになりました。
この記事では、この考え方について
- どこまでが正しいのか
- どこからが誤解を生みやすいのか
を整理しながら、初心者向けに分かりやすく解説します。
結論|「国の赤字=民間の黒字」は“一部正しいが、言い切りは危険”
まず結論からお伝えします。
「国の赤字=民間の黒字」という説明には、
会計的に正しい面もありますが、単純化しすぎると誤解を招きます。
そのまま鵜呑みにするのではなく、
前提条件と限界を理解することが大切です。
そもそも「国の赤字」とは何か?
国の赤字とは、
税収よりも支出のほうが多い状態
を指します。
たとえば、
- 税金で90万円集める
- 国が100万円使う
この場合、国は10万円の赤字です。
この説明自体は、初心者向けとして問題ありません
(実務上は「基礎的財政収支」など、より細かい指標もあります)。
政府が赤字を出すと、民間にお金が回るのは事実

政府が赤字を出すとき、多くの場合は
- 国債を発行し
- その資金で支出します
この支出先は、
- 公共事業を行う企業
- 公務員
- 年金・社会保障を受け取る家計
など、民間部門です。
この意味で、
政府の赤字拡大が、民間の所得増加につながる
という説明は、方向性として正しいと言えます。
国と家計を同一視するのは間違い
よくある例えに、
「国の借金=家計の借金」
というものがありますが、これは正確ではありません。
日本政府は、
- 円という自国通貨を発行できる
- 国債は基本的に円建て
という特徴を持っています。
そのため、
家計のように「返せなくなって破産する」という形にはなりません。
この点で、
「国と家計を同じ感覚で不安視するのはミスリードになりやすい」
という指摘は妥当です。
ただし「国の赤字=民間の黒字」と言い切れない理由
ここからが、注意すべきポイントです。
実は「3つの部門」で成り立っている
経済全体は、次の3つの部門に分けて考えられます。
- 政府
- 民間(家計・企業)
- 海外
この3つの収支は、次の関係にあります。
政府収支 + 民間収支 + 海外収支 = 0
これを「セクターバランス」と呼びます。
つまり、
- 政府が赤字
- でも海外も黒字
という場合、
政府の赤字=そのまま民間の黒字
とは限りません。
日本は経常黒字の年が多いため、
「政府赤字+海外黒字=民間黒字」
という形になりやすいだけなのです。
「国の債務100万円=現金100万円誕生」は簡略化しすぎ
「国の借金が増えると、その分お金が生まれる」
という説明も、理解の助けにはなりますが、正確ではありません。
実際には、
- すでに存在するお金が国債に置き換わるだけのケース
- 日銀のバランスシート上で資産と負債が入れ替わるだけの取引
も多くあります。
そのため、
国の債務増加=必ず新しい現金が同額生まれる
と理解するのは、行き過ぎです。
国が黒字でも、民間が黒字になることはある
「国が黒字になると、民間は苦しくなる」
これは短期的には起こりやすい傾向ですが、絶対ではありません。
- 民間投資が活発な場合
- 輸出が好調な場合
には、
政府が黒字でも、民間が黒字になるケースもあります。
現実の経済は、
政府・民間・海外が同時に動く複雑な仕組みです。
「借金◯◯兆円」報道への批判はどこまで正しいか?
妥当な点
- 家計と同じ感覚で「破産する」と煽るのは不正確
- 国債は政府の負債であり、同時に民間の資産でもある
注意すべき点
- 「だから全く問題ない」と言い切るのも危険
- 金利上昇やインフレによる実質的な負担は存在する
押さえておきたいリスクの視点
日本の国債残高は、GDPの2倍以上です。
今後、
- 金利が上がれば利払い費が急増する
- インフレが制御不能になれば、生活コストが上がる
- 通貨価値が下落すれば、実質的な負担が増える
といった形で、
将来世代に影響が出る可能性は否定できません。
「破綻しない=ノーリスク」ではありません。
この考え方を整理するのに役立った一冊
こうした複雑な話を、
イメージで理解する助けになったのが、
『東大生が日本を100人の島に例えたら、
面白いほど経済がわかった!』(ムギタロー 著)
です。
日本経済を「100人の島」に置き換えて説明しており、
- 国・民間・お金の流れ
- 税金や国債の役割
を、初心者でも俯瞰できる構成になっています。
まとめ|安心しすぎず、恐れすぎず
最後に整理します。
- 「国の赤字は誰かの黒字」という視点は有益
- ただし「国の赤字=民間の黒字」と言い切るのは危険
- 海外部門・金利・インフレ・成長率も含めて考える必要がある
- 借金額だけで不安になる必要はないが、無関心も危険
正しく知ることが、冷静な判断につながります。
経済の話に振り回されないためにも、
「シンプルな説明」と「その限界」をセットで理解しておくことが大切です。

