はじめに:正しさだけでは、人の心は動かない

「正しいことを言えば伝わるはずだ」
かつて、アナウンサーの桝太一さんはそう信じていました。
理系出身で、論理的に考えることが得意だった彼。
“理屈で人の心を動かす”──そんな思いで報道現場に立っていたといいます。
しかし、アナウンサーとして多くの人の「言葉」と「感情」に触れる中で、
彼の中に大きな変化が生まれました。
それは、「人の心は理屈では動かない」という、人生を変える気づきでした。
澤穂希さんとの出会いがくれた“心の動き”の原点
桝さんが「伝える」という本質に気づいたのは、2012年ロンドンオリンピック。
当時、リポーターとして現地に滞在していた桝さんは、
大舞台の空気に飲まれ、緊張と不安の中にいたといいます。
そんなとき、会場で元サッカー日本代表・澤穂希さんが
笑顔で「ますさーん!」と声をかけてくれました。
そのたった一言が、桝さんの心を一瞬で軽くし、
「伝えることの本質」に気づくきっかけとなりました。
実際にリポーターとして試合を取材する中で、
澤さんやチームメイトたちの姿に何度も“心が動かされる瞬間”があったそうです。
ゴールの歓喜、悔し涙、仲間を信じて戦う背中──。
それらは、どんな理屈よりも強く、人の心を揺さぶりました。
「誰が言うか、どう言うかじゃなくて、中身が大事だと思ってた。
でも、澤さんと出会い、目の前で人の心が動く瞬間を見たとき、
“伝える”って理屈だけじゃないとわかった。」
人の心は、正しさではなく想いの熱量で動く。
その学びが、桝さんの中で「伝える」という仕事の意味を根底から変えたのです。
科学への尊敬が息づく街・ロンドンで感じたこと
アナウンサーとしての気づきに加え、
ロンドンでの取材中に、もう一つの大きな発見がありました。
それが、科学者へのリスペクトが根付いた社会との出会いです。
ウェストミンスター寺院には、サイエンティストコーナーという一角があり、
そこにはアイザック・ニュートン、チャールズ・ダーウィン、スティーヴン・ホーキングなど、
世界を変えた科学者たちの記念碑が並んでいます。
「ロンドンでは国民的な場所に、科学者だけのコーナーがある。
それがすごいと思った。」
日本ではスポーツ選手やアーティストが注目される一方、
科学者という存在はまだ身近とは言いがたい。
「だからこそ、自分が研究者として、科学の魅力をもっと伝えていきたい」
──桝さんはそう語り、アナウンサーから研究者へと歩みを進めていく決意を固めたのです。
研究者に憧れた理由──“0から1”を生み出す喜び

桝さんが研究の世界に惹かれたのは、
「0から1を生み出し、誰かにバトンを渡せる仕事」だから。
研究の現場では、失敗も否定も当たり前。
でもそのひとつひとつが「新しい発見」につながります。
「研究のいいところは、否定されてなんぼ。
失敗にも意味がある。
行き止まりを見つけたこと自体が、次への発見になる。」
意見が違うことも、議論がぶつかることも、すべてが前進の証。
それはまさに、アナウンサーとして“人の心を伝える”ことと通じていました。
桝太一さんが教えてくれた「伝える力」と「生きる勇気」
桝太一さんの生き方は、
「理屈」から「共感」への転換でした。
人は、正しい言葉よりも、
心で語られる言葉に動かされる。
そして、挑戦や失敗を恐れずに進む人に、
人は共感し、勇気をもらう。
彼が座右の銘として大切にしているのが、
偉大な科学者アイザック・ニュートンの言葉です。
「今日なし得るだけの事に全力を尽くせ。
しからば明日は一段の進歩あらん。」
おわりに:理屈ではなく、心で伝える時代へ
桝太一さんの“もう一つの空”ロンドンでの体験は、
「伝えるとは、相手の心に触れること」だと教えてくれます。
澤穂希さんの「ますさーん!」という声に励まされ、
現場で見た一瞬一瞬に心を動かされ、
そして科学の街で「伝える使命」を再確認した。
桝さんの人生は、まさに“理屈ではなく、心で動く生き方”そのものです。
まとめ
| 学び | 桝太一さんの言葉 |
|---|---|
| 伝える力 | 「人の心は理屈じゃ動かない」 |
| 澤穂希さんとの出会い | 「ますさーん!の一言が勇気をくれた」 |
| 科学への情熱 | 「科学者が尊敬される社会をつくりたい」 |
| 研究の姿勢 | 「否定されてなんぼ。失敗は発見」 |
| 座右の銘 | 「今日なし得るだけの事に全力を尽くせ」 |
読者へのメッセージ
もし今、あなたが「うまく伝わらない」「努力が報われない」と感じているなら、
どうか思い出してください。
人の心を動かすのは、理屈ではなく、あなたの想いです。
桝太一さんのように、心で動き、心で伝える人こそ、
世界を少しずつ温かく変えていくのです。

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